新たに法人を設立するときの形態の1つとして、「一般社団法人」が挙げられます。弊所で法人設立をお手伝いする場合には、「株式会社」次いで「合同会社」を設立される方が多く、未だ経営者の方に広く浸透している法人とは言い難いのが実情ですが、行う事業によっては、一般社団法人も選択肢の1つとして検討の余地があります。
本稿は、そんな一般社団法人のあらましをご説明していきます。
1.そもそも一般社団法人とは?
一般社団法人は、平成20年から設立可能となった非営利法人で、大まかに言うと、「非営利」を目的とする人、集団にたいして法人格が与えられたものです。
ここでいう「非営利」については、②で後述しますが、法人があげた利益を、その会社を構成する社員に分け与えることができないという性質を指します。
実務では、ボランティア事業、同窓会、サークル活動、自治会、学術・職能団体などで設立するケースが多いです。
2.一般社団法人の特徴とは?
①まずは、前項で少し触れましたが、非営利法人であるという点です。具体的には、社員(一般社団法人の構成員)に対して、剰余金(事業活動で得た利益や残余財産(法人解散時の残った財産)の分配を受ける権利を与えることができない法人です。
ですが、何も法人が儲けて利益をあげること自体を禁止している訳ではなく、事業としては、公益事業(例えば、同窓会、サークル等)のほか、通常の収益事業も行うことができ、特段の制限はありません。
ここで、株式会社と比較して、対外的な観点からだと、やはり株式会社の方が、利益(金儲け)を追求していると見られがちであり、その点一般社団法人は、どちらかというと利益を求めない公益的な性質の印象を持たれやすいと感じます。
②一定の要件を満たす一般社団法人は、収益事業からの収益以外が法人税の課税対象にならなくなる税制上の優遇が受けられます。ただし、この法人は定款の定めや理事にいくつかの要件がありますので、それらの要件をすべて満たす必要があります。
逆に、一定の要件を満たす一般社団法人以外は、税制上は株式会社と同様になりますので、税制上の優遇目的で一般社団法人の設立を検討される方は、この要件を遵守しなければなりません。
③設立時やは所轄庁の許認可は不要となります。また設立後も所轄庁の監督を受けることはありません。
3.設立時に手続きは?
一般社団法人の設立手続きは、株式会社と似ています。おおまかな流れは以下の通りです。
(1)定款の作成・公証人の認証
株式会社と同様に公証人の認証を受ける必要があります。なお、認証手数料は5万円です。この定款は、2名以上の社員(法人の構成員)が共同して作成しなければいけないことから、設立時の社員は最低でも2名必要となります。
(2)設立時理事等の選任
法人の役員を選任します。なお、株式会社でいうところの取締役にあたる理事は、最低1名から設立が可能です。
なお、前項②で述べた税制上の優遇を受ける一般社団法人の場合、理事が最低でも3名必要となり、かつうち2名は、親族や雇用関係にないといった条件があります。
(3)設立時理事による調査
(4)管轄法務局への設立登記の申請
一般社団法人は、株式会社と同様に、設立の登記をすることによって成立します。
以上を踏まえ、これから法人設立を検討されている方は、選択肢の1つとして一般社団法人も検討されてみてはいかがでしょうか。