会社の種類の中で、株式会社の他に有限会社をご存じの方は多いと思いますが、両者の違いはご存じでしょうか?本稿ではその違いについてご紹介していきます。

1.有限会社とは?
有限会社とは、会社法施行(平成18年5月1日)より前に設立することができた法人形態の1つです。設立するためには、資本金300万円以上、社員数50名以内、取締役1名以上といった要件を満たす必要がありました。会社法施行前の株式会社が、資本金1,000万円以上、取締役3名以上、取締役会と監査役の設置が必須と設立のハードルが現在よりも高かったため、資金的にも人的にも、当時は有限会社の方が会社設立の負担が少ない会社形態であったと言えます。

 ただし、この有限会社、会社法施行後は、設立することができなくなってしまいました。理由としては、会社法施行による株式会社の設立要件の大幅な緩和があります。従前までは容易には設立できなかった株式会社ですが、会社法施行後は、資本金は1円から、取締役も1名からで可能、取締役会や監査役の設置も任意にと、小中規模での事業を計画している方にとってだいぶ敷居が低くなりました。そのため、株式会社と有限会社を併存させる必要性が希薄になったことから、有限会社は新設不可となりました。

 では、既に存在していた有限会社はどうなったかといいますと、大きく2通りに分かれます。
① 法律により特例有限会社になる
② 会社法施行に合わせて商号を有限会社から株式会社に変更(手続きは有限会社の解散と、株式会社の設立)

 ①の特例有限会社は、名前こそ有限会社とありますが、株式会社の1つです。またこのときに、既存の有限会社の登記事項も、法務局の登記官の職権で変更が加えられています(登記記録にある「平成17年法律第87号第136条の規定により平成18年〇月〇日登記」の部分がその変更を表しています)。

 

2.株式会社との違い
 では、株式会社との違いについて、特例有限会社に焦点を当てていくつかご紹介します。
・新しく設立ができない
 先ほども述べましたが、平成18年5月1日以降においては、特例有限会社は設立することができません。

・役員の任期がない
 ここは株式会社との大きな違いです。小中企業の株式会社であれば多くが役員の任期を10年としていますが、それでも10年に1回は役員を選び直す必要があります。それに伴って役員の変更登記も行わなければなりません。この変更登記手続きを失念してしまう会社も散見されます。変更登記を怠ると過料を科される場合もありますので、その負担がない点は大きなメリットです。

・みなし解散がない
 株式会社であれば12年間何の登記もされていない場合は、解散したものみなされてしまいます。なお令和5年は、27,887の株式会社がみなし解散となっています。

・組織再編のときに一定の制限を受ける
 吸収合併や吸収分割等を行う際に、存続会社や承継会社になることはできません。逆に、消滅する会社や吸収される会社にはなることができます。

 

 ここまで(特例)有限会社の概要とその特徴をご紹介いたしました。特に役員の任期がないといった点は、意外と知らない方もいらっしゃるように見受けられます。新設こそできない特例有限会社ですが、有限会社の商号で事業を行われている会社も勿論見受けられますし、手続上でも株式会社と同様に目的等の変更や増資をすることも可能です。
 特例有限会社の手続きにつきましてもお困りのことがございましたら、ぜひお気軽に弊所にご相談下さい。