株式会社の株主には、会社法上、様々な権利が認められており「株主総会での議決権行使」は最も代表的な権利ですが、個人である株主が死亡して相続が発生した場合、株主としての権利は誰が行使できるでしょうか。
前提として「相続」は人の死亡と同時に発生します。
すると被相続人の財産は、原則として一旦相続人全員の共有状態となり、相続人間での遺産分割協議によって個々の財産の継承者が定まることになります。
亡くなった人が保有する株式についても、遺産分割協議を経て承継者が決まれば、その承継者が株主としての権利を行使できます。
一方で、遺産分割協議が成立するまでの間は、相続人全員の共有状態となります。仮に200株を保有する方が死亡して相続人が2人(相続分は各2分の1)の場合、自動的にそれぞれが100株ずつ承継するのではなく、200株全部を2人が共有する状態になり、共有の場合、権利行使に関する事項は共有持分の過半数で決めるとの判例があるため、各2分の1の共有状態ではどちらか一方の相続人が単独で株主としての権利を行使することはできません。
また、会社法では、株式が2名以上の共有のときは権利行使者1名を定めて会社に通知をしなければ、その株式の株主としての権利は行使できない旨を定めています。相続人の中から遺産分割協議成立までの間の代表者を決めて会社に知らせる必要があるということで、この通知をしなければ株主としての権利を行使できないことになります(例外的に、会社に対して通知していない場合であっても会社側が認めれば、相続人全員が共同して権利行使する等の要件を満たせば議決権を行使できる場合もあります)。
先の例で、亡くなったのが家族経営の株式会社の全株式200株を保有する父であって、その相続人が子2人とした場合、遺産分割協議が紛糾して株式の承継者が決まらず、かつ権利行使者1名を決める協議もできない場合には、株主としての権利を行使できる人が誰もいないこととなり、定時株主総会/臨時株主総会の決議ができないことにもなってしまいます。そうなれば会社の経営に支障をきたす恐れも生じてしまいます。
ですから、特に家族経営のような中小零細企業の経営者の方は、自身の保有する自社株式の相続のことをしっかりと考え、生前贈与や遺言書などの方法により、跡継ぎとなる方に株式がスムーズに承継されるよう対策しておくことをお勧め致します。
当事務所でも、必要に応じて税理士と連携して、生前贈与や遺言書作成に関するサポートを行えますので、お考えの方はお気軽にお問い合わせください。