令和6年4月1日から改正犯罪収益移転防止法が施行されました。法改正により、株式会社等の法人が次に挙げる行為をする場合であって、司法書士・行政書士・税理士・公認会計士が当該行為の代理または代行をする場合には、司法書士等にはこれまで以上に厳格な本人特定事項等の確認が義務付けられることになりました。
  [確認が必要な取引]
   ・宅地または建物の売買に関する行為または手続
   ・会社等の設立または合併等に関する行為または手続
   ・200万円を超える現金、預金、有価証券その他の財産の管理・処分

 これまでは上記行為の当事者が法人である場合には、司法書士等は、登記事項証明書や印鑑証明書により法人の名称や所在地を確認するほか、取引担当者個人の本人確認書類により本人特定事項の確認を行っていましたが、それに加えて次の事項を確認する必要が生じるため、取引に際して確認書類の追加提出を求められることになります。
[確認事項と確認方法/確認書類]
   ① 取引を行う目的について、申告を受けること。
   ② 法人の事業内容について、定款や登記事項証明書で確認すること。
   ③ 法人の実質的支配者について、代表者等から申告を受け、必要に応じて株主名簿や有価証券取引報告書などで確認すること。
   ④ 200万円を超える財産移転を伴う取引のうち法の規定に該当する取引について、資産および収入の状況を確認すること。

 上記のうち③について、実質的支配者とは、『議決権の保有その他の手段により当該法人を支配する自然人』であって、株式会社であれば『議決権の25%を超える多数の株式を保有する人』等を指しますが、その実質的支配者が誰であるかの確認資料の提出が求められることになります。
 その確認資料として、株式会社及び特例有限会社において利用を検討したいのが、法務局が行う『実質的支配者リスト』制度です。(※利用できるのは株式会社及び特例有限会社に限られます。) 株式会社等が法務局へ申し出ることにより、当該株式会社等が作成した実質的支配者リストについて、所定の添付書類により内容を確認した上でこれを法務局が保管し、登記官の認証文付きの写しの交付を受けられるというものです。法務局の確認を受けていることから信頼性の高い確認資料となります。(申出時に実質的支配者個人の本人確認資料を提出する場合には、その点についても確認を受けたことが示されるため、より信頼性が高まります。) この制度の利用に法務局の手数料はかからず、郵送での申し出も可能です。
 今回の法改正の流れを受けて、様々な場面で確認資料の提出が求められるだけでなく、資料自体にも信頼性を求められることが予想されますので、株式会社及び特例有限会社においては、実質的支配者リスト制度の利用を検討されることが推奨されます。制度の利用に関する相談や申し出の代行をご希望の場合には、弊社パートナーズ司法書士法人にお問い合わせください。