令和3年2月から会社法改正により会社印鑑の法務局への届出自体が任意になったものの、実務上は現在もほぼ必須である会社印鑑の届出ですが、使用する印鑑にはどのような決まりがあるでしょうか。
 実のところ、明確な決まりは印鑑の大きさに関するものくらいしかありません。
 印鑑の大きさは、1辺の長さが1cmを超え3cm以内の正方形の中に収まるものでなければならない、とされています。丸型でも角型でも印鑑の形は問いませんが、角型で1辺が1cmピッタリや丸型で直径が1cmピッタリだと、「1cmを超え」を満たさないため認められず、逆に角型の1辺あるいは丸型の直径が3cmを超えると、「3cm以内」を満たさないために認められません。
 会社設立時などに暫定的に代表取締役個人の実印を会社実印として届け出ることがありますが、その場合には特に印鑑のサイズに注意しましょう。1cmより小さいことがあるからです。(※個人の実印(市区町村への印鑑登録)は、多くの場合、1辺又は直径が8mmを超え25mm以内の正方形の中に収まるものとされており、1cm以下の印鑑でも登録ができるため、会社実印とするには小さい場合があります。)

 一方で、会社印鑑の印面の書体やレイアウトは自由ですし内容にも特段の決まりはありません。実際には印面の外周に「株式会社ABC」のように商号が配置され中央に「代表取締役印」と彫られたものを多く見かけますし、このような印鑑が適切であると考えますが、決まりがあるわけではありません。上記のように個人実印を会社印鑑として届け出ることもできますし、さらには、会社の商号を変更した場合でも印鑑の変更届出が任意である(=実際の商号と印鑑の商号が一致していなくてもよい)ことからすると、「株式会社ABC」が「株式会社XYZ」と彫られた印鑑を届け出ることも出来てしまう可能性もあります。(実際にはトラブルの元ですから敢えてそのようなことはしないでいただきたいと思います。)

 上記のように会社印鑑には大きさの他には特段の決まりはありませんが、会社印鑑は、印鑑証明書の提出が求められるケースなど特に重要な場面で使うことが多い印鑑ですから、適切な内容や大きさの印鑑を使用することが、会社の信用性という面でも望ましいと考えます。

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